よき人に近づけば


 永平寺の二代目の孤雲懐奘(こうんえじょう)禅師様が、師匠の道元禅師様の言葉を記した『正法眼蔵随聞記(しょうぼうげんぞうずいもんき)』の中にこんな話があります。

 一日示に云く、古人云く、霧の中を行けば覚えざるに衣しめる。よき人に近づけば、覚えざるによき人となるなり。
 昔、倶胝(ぐてい)和尚に使へし一人の童子のごとは、いつ学びし、いつ修したりとも見えず、覚えざれども、久参に近づいしに悟道す。

 霧の中を歩いていると、知らないうちに着ている物がぬれていますよね。これと同じように、よき人に近づくと、自分でも気付かないうちによき人になるというのです。
 もちろん他人を外見で、よき人かそうでない人か判断する事は出来ません。よき人かそうでないかを判断するには、自分自身よき人になるよう努力が必要だと思います。
 現代社会にはいろいろな情報で溢れています。こんな時代だからこそ自分をしっかりみつめ、日々の生活を送っていきたいと思います。そして、すばらしい霧を見つけていただきたいと思います。