心をこめて


 法事におじゃました時のことです。
 順にお焼香をして頂いていたら、五才くらいのお孫さんがお焼香の仕方が分からなかったようで、おじいちゃんがお焼香の仕方を説明していました。

 おじいちゃんはお焼香のまねをしながら、「○○ちゃん、こうやってお香を摘んで、頭のところに持って来て、念じてからここに入れるんだよ」と説明していました。
 お孫さんは、「おじいちゃん、こう?こう?」と言いながら、おじいちゃんの真似をしてお焼香をしてました。
 私は、微笑ましい光景だなと思って眺めていたらお孫さんが、「おじいちゃん、念ずるってなぁに?」、「念ずるってどうするの?」って言い出しました。おじいちゃん、ちょっと困ったような顔をして「こうするんだよ」と言って、お香を摘んだ格好をして、その手を頭(おでこの辺り)に持っていきました。
 ちょっと困ったようなおじいちゃんの顔を見て、私も黙って見ているわけにもいかず、「心をこめて一生懸命お祈りするんだよ」と説明をさせて頂きましたが、お孫さんにはやはり難しい言葉だったでしょうかね。皆さんでしたらどのように答えますか。
 お焼香の他にも、お線香を立てる時も念じてから立てますし、仏さまにお参りする時にも合掌して念じますよね。
 このという字は、という字とという字から出来てます。つまり今の心をこめて心中に祈ると言うことになります。
 改めて言うまでもなく、お参り時には心をこめてお参り頂いてると思いますが、これからは今以上に心をこめてお参り頂ければと思います。
 また、一周忌とか何回忌のという字がありますが、この字は、忌中とか忌まわしいと使われるように、どちらかというとあまりいいイメージのない字だと思います。辞書を引いてみても、『心中にはいって抵抗が起きて、素直に受け入れないこと』とあり、やはりあまりいい意味にはないようです。
 しかし、このという字は、という字とという字で出来ていて、己の心となります。お葬式や法事の時、お亡くなりになった方の冥福を祈ってお参り頂くのはもちろんですが、己の心と言うことで、自分自身を見直す機会にもして頂ければと思います。
H15.10.26